医療法人財団兵庫錦秀会 神出病院(兵庫県神戸市)で発生した虐待及び暴行等事件に対しての要望

2020年7月3日

神戸市市長
久元喜造 様

全国自立生活センター協議会
東京都八王子市明神町4丁目4番11号
シルクヒルズ大塚1F
代表 平下耕三

医療法人財団兵庫錦秀会 神出病院(兵庫県神戸市)で発生した
虐待及び暴行等事件に対しての要望

私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、地域の中で共にある社会の実現を目指して活動する障害当事者団体である。全国120ケ所を越える障害当事者団体(自立生活センター)で構成している。

医療法人財団兵庫錦秀会 神出病院(兵庫県神戸市)において入院中の患者さんに対して虐待・暴行・強制わいせつなどを行ったとして、看護師ら6人が2020年3月4日に逮捕された。
新聞報道などによると、入院患者に対し、裸にしてトイレに座らせ水をかける、患者を寝かせベッドを逆さにして監禁する、男性患者同士強制的にキスをさせる、性行為を強要するなど、人権を無視した非人道的で卑劣極まりない行為を看護師らが夜の巡回の時間に防犯カメラのない部屋やトイレで繰り返し行い、その様子を動画に撮影しSNSで共有していたということが明らかになっている。

上記事件は宇都宮事件や箕面ヶ丘病院事件と同列あるいはそれ以上に精神障害者の人権を侵害した事件でありこのような事件の発生はもちろんのこと、神出病院事件で発生した事件がきっかけで神出病院を始め日本全国の精神科病院で入院中の精神障害者の行動規制や入院処遇が今以上に劣悪にならないよう再発防止策を講じる必要がある。

長期に及ぶ精神障害者に対する隔離収容施策・社会的入院(長期入院)が今回の事件の一因と我々は考えており、精神科病院の社会的入院の早期解消が急務である。精神障害者も病院でなく地域で健常者と同じように当たり前に暮らせる社会であればこのような事件は起こらなかったと推測される。

我々は深い悲しみと怒りを感じており、このような精神障害者の人権がひどく侵されたことに対し断固抗議し、下記12項目の要望をする。以下に対して7月31日までに文書で回答を求める。

【責任の所在について】
1.事件を容疑者個人の問題として裁判所の判決だけに委ねるのではなく、神出病院の人権意識の欠落、神戸市の監査が機能していなかったことに原因があることを神戸市が把握し監査強化を行う等、再発防止策を講じること。

【被害調査について】
2.神出病院に入院している全ての入院患者に対して第三者機関へ委託し(弁護士・人 権保護団体等を構成員として加えること)虐待・暴行の被害調査を行うこと。

【権利擁護・転院・退院促進について】
3.神出病院で入院患者が退院や転院の意思を言葉や文章だけでなく何らかの形で表明した場合は、神戸市は必要な資源を速やかに提供し、入院患者が希望する生活を送れるよう援助すること。同時に精神障害者の地域生活・自立生活に向けた支援体制を整え、いつでも地域で安心した生活が送れるように配慮すること。

【神出病院への指導】
4.神出病院が入院している患者に対して事件を分かりやすく丁寧に説明・謝罪を行えるよう神戸市が指導を行うこと。

5.「虐待・犯罪行為防止のため」という趣旨で、監視カメラを増やすことや管理体制 を強めることは患者のプライバシー・人権を著しく侵害する。神出病院ではすでに監視カメラの新規増設を公表している。即刻に撤去を指導し、監視カメラに変わり医師、医師以外の専門職の増員などによる患者の安全と人権を守るよう神戸市として指導すること。

【情報の公開】
6.神戸市が調査した調査結果や対応を隠すことなくマスコミなどに公表すること。

7.今回の事件は継続的に犯行を行っていたと容疑者が供述しているが、神戸市が昨年度行った神出病院への通称630調査結果を公開すること。また調査時に患者や職員へ虐待についての聞き取り調査などを行ったか具体的に回答すること。

【人権研修の実施】
8.虐待事件は患者側の問題ではなく、神戸市の監査不備、病院の運営体質、人権意識の欠落が一因であり、病院運営者・医師・医師以外の専門職などに対し人権研修を行うこと。職員が人権意識を保つためには障害当事者からの人権研修が最も大切である。従って、研修実施の際には障害者団体及び精神障害当事者を入れること。

9.事件を未然に防ぐためには、精神科病院の透明性が重要である。今後、神出病院を含む神市内の全ての精神科病院に対し、行政の調査とは別に人権活動をしている障害者団体に病院訪問及び調査を委託し、精神科病院の閉鎖性を解消していくこと。

10. 2、8、9の項目の人権活動している当事者団体・個人についてはその実績を考慮しつつ、公平性を保つために、神戸市とは独立した団体からの公募で決めること。

【精神医療審査会について】
11. 精神科病院での虐待事件が繰り返し起きる要因として、退院請求・処遇改善請求が上がりにくい、形骸化しているなどの問題がある。神戸市はこの問題について 解決するよう取り組み、例えば、退院請求・処遇改善請求を患者ができるように、わかりやすくいリーフレットをつくり患者に配布するとともに、退院請求についてわかりやすい場所に掲示するなど実践的な取り組みをすること。

12.精神医療審査会の審査で退院請求や処遇改善請求が上がった場合には、請求を行った本人に会いに行き精査すること。また、退院請求・処遇改善請求を行えるように病院外部のアドボケーター(弁護士・当事者団体等)が病院訪問を行えるよう環境整備を行うこと。

以 上

<連絡先>
全国自立生活センター協議会
〒192-0046東京都八王子市明神町4-11-11-1F
TEL:042-660-7747 FAX:042-660-7746

 

医療法人財団兵庫錦秀会 神出病院(兵庫県神戸市)で発生した虐待及び暴行等事件について、適切な対応を求める要望
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