2022年3月15日 声明文 旧優生保護法訴訟に係る東京高裁判決及び大阪高裁判決上告取り下げについて 全国自立生活センター協議会         代表 平下 耕三 私たちは、どんなに重い障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、障害者権利条約が守られるよう、障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会(インクルーシブな社会)を目指して活動する障害当事者団体です。全国110ヶ所を超える障害当事者団体(自立生活センター)でつくられています。 私たちは、旧優生保護法訴訟(障害者だからという理由で、子どもを産み育てる権利を奪われたことについて国に謝ってほしい、反省してほしいと求めている裁判)で、3月11日に東京高等裁判所が決めたことに対して国は反対しないこと、そして、3月7日に大阪高等裁判所が決めたことに対して国が反対したことを取り下げてほしいと強く求めます。 2022年2月22日の大阪高裁、3月11日の東京高裁ともに、「旧優生保護法は非人道的で憲法に違反する」(とてもひどいもので、憲法を守っていない)と言いました。傷つけられて20年以上たってから訴えた裁判は、賠償請求権(間違いを認めて反省をしてほしいと求めること)がなくなってしまうという決まりがあります。しかし当時は、裁判をするための情報を得ることが難しかったり、相談できる場所がなかったりしたため裁判をすることが難しかったとして、20年という期間の決まり(除斥期間)を、今回の2つの裁判では使わないことにしました。国が障害者の差別や偏見を進んで行なっていたことや、被害を受けた人たちを仲間はずれにしたことについて、裁判所は強く怒りました。そして旧優生保護法という法律を作った国に責任があると裁判所は言いました。 この裁判所の意見を聞いて、岸田文雄首相・松野博一官房長官は、「政府としてしっかり反省します」「同じ間違いを繰り返さないように努力します」と言って謝りました。 国は「反省します」と言って、裁判を起こした人たちに申し訳なく思っているのに、裁判所の意見を認めようとしません。裁判を起こした人たちは高齢の方たちばかりです。裁判を起こした25名のうち4名の方がすでに亡くなられています。長い間傷つけられてきた人たちは、こころやからだがつらいと言っています。 今すぐ、奪われた権利を回復し、国は謝りお金を支払うべきです。国はすぐに裁判所の意見を受け入れ、大阪高裁・東京高裁の決まりを確定させてほしいです。そして旧優生保護法問題がすべて解決していくよう動いてほしいと私たちは強く思っています。社会に広がっている優生思想(命をいる/いらないとわける考え方)ときちんと向き合ってほしいと思っています。 私たち全国自立生活センター協議会は、全国の仲間たちに「国は裁判所の意見に反対しないでほしい」と声を一緒にあげてほしいと呼びかけます。被害を受けたすべての方々が救われるよう、全国各地の裁判に勝つことを目指します。そして、裁判を聞きに行くことなど、様々な支援を行ないます。障害のある人が一人の人間として大切にされること、命の大切さ、いらない命などはないこと、人間が存在していることに価値があることを訴え続けます。二度と同じ間違いを繰り返させないことを強く求めていきます。