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国連の締約国会議のサイドイベント報告 【WIN共同声明】の発信

国連の締約国会議のサイドイベント報告
【WIN共同声明】の発信

6月14日(月)、国連障害者の権利条約の第14回締約国会議で、WINとして初めてサイドイベントをウェビナーで開催しました!
WINは2017年の設立依頼、2-3ヶ月に1回の【WIN世界役員会議】を続けてきました。 これまで各国のIL運動の発展について情報交換をし、またコロナ禍で世界の障害者が直面した共通の課題についても各国の状況を報告し合い、コロナ禍での声明も出してきました。
今回のサイドイベントはヨーロッパIL協議会(ENIL)のリーダーシップで、WINとして初めてイベントを企画し、世界で連結して脱施設化を進め、権利条約19条及び一般的意見5の実施を目指していくため、【WIN共同声明】を発信しました。
サイドイベントでは、JCILの大藪光俊さんが日本代表として報告をしてくださり、イベントの終わりにはWINの世界役員と一緒に【WIN共同声明】を読み上げました。

★このサイドイベントのビデオ・報告はENILのホームページから閲覧可能です。
https://enil.eu/news/win-calls-for-global-independent-living-movement-to-play-a-role-in-covid-recovery/


写真①:ZOOMスクリーン(WIN世界役員と大藪さん、ジュディ・ヒューマン、権利委員会のアマリアさん、韓国のチャノさん、NCIL代表サラさん、 ENILジェイミーさんと国際手話通訳)


写真②:国連障害者特別報告官ジェラルドクイン氏はビデオメッセージで参加。

WINサイドイベントレポート
JCIL 大藪光俊
京都にある日本自立生活センター(JCIL)で当事者スタッフとして活動している大藪光俊です。
去る6月14日、国連ニューヨークで行われた障害者権利条約締約国会議のサイドイベントにて、日本のスピーカーとして登壇させていただきました。
今回のサイドイベントは、WIN [World Independent Living Center Network] が主催したもので、アジア・北米・中米・ヨーロッパから活動家が集まり、各地の状況を報告しました。
世界的にコロナ禍が広がり、施設入所を強いられている多くの障害者が集団感染で命を落としたり、十分なヘルスケアを受けられない障害者がたくさん生み出されてしまいました。障害者を弱い存在と見なし、医療モデル的な障害の捉え方にこの世界が逆戻りしてしまう危険性が謳われています。コロナ禍から世界が立ち直りつつある今だからこそ、改めて障害者権利条約第19条の実現に向けて、世界規模で脱施設に向けた自立生活運動の推進の重要性が確認されました。
私も日本代表として3分間のスピーチをさせていただいたのですが、自身が今中心的に関わっている「筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト」の取り組みについて紹介しました。日本全国で重度訪問介護による24時間介助保障が認められているのに、未だに筋ジス病棟には2000人もの人たちが収容されている。しかも、コロナ禍以降、誰も病院の中に立ち入ることができず、入所者の人たちは1年以上にわたって愛する家族や支援者にすら会えない状況に置かれています。私自身はたまたま生まれた時から地域で暮らし続けてきましたが、筋ジス病棟に入ってそのまま一生を終えていた可能性も十二分にあります。だからこそ、みんなに地域に出て欲しい、そんな思いを伝えさせていただきました。
当日は世界で活躍する障害者運動の活動家たちを前に、また自立生活運動を牽引するジュディ・ヒューマンを前にして相当緊張しましたが、私たちの活動を世界にアピールできたことは本当に嬉しく光栄でした。また、各国で脱施設の取り組みの重要性が共有されているということを実感できて、これからも粘り強く、日本の脱施設化に向けて着実に運動を展開していきたい、そんな思いを新たにさせられたひと時でした。本当にありがとうございました!

写真③: JCIL藪光俊がスピーチしているところ。
(スクリーン右側に大藪さん、左側に国際手話)

写真④:サイドイベント終わりに、WINメンバーが【共同声明】を読んだ。 (スクリーンはWIN役員と大藪さん、ジュディと権利委員会のアマリア氏+国際手話通訳)

WIN共同声明【日本語版】
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WIN共同声明【英語版】
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津久井やまゆり園でのパラリンピック採火に対する抗議文

2021年4月16日

津久井やまゆり園でのパラリンピック採火に対する抗議文

全国自立生活センター協議会
代表  平下 耕三

私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、地域の中で共にある社会の実現を目指して活動する障害当事者団体です。全国110 ケ所を越える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。
3月21日の報道によると、神奈川県、相模原市、かながわ共同会は、2020東京パラリンピックの採火を「津久井やまゆり園」で行うことを固めたとあり、一部では「共生社会の実現に向けた強い決意を国内外に示すため、園で採火することにした」報道されています。
しかし、「津久井やまゆり園」は、150名以上もの障害のある者を収容してきた大規模施設です。2016年7月26日未明、元職員によって19名もの知的障害のある者が殺害され、24名の知的障害のある者と2名の職員が負傷しました。戦後、最悪の大量殺人事件として世界中の障害のある者を恐怖に陥れ、優生思想が社会に蔓延していることを顕著にし、賛同する声が相次ぐなど、むしろ助長させた場所であると言えます。さらに、この事件により亡くなった19名は、家族の意向等で名前を公表されていません。事件から5年経ったいまでも亡くなられた人たちの悲痛な叫びは未だ触れられておらず、真相究明には全く向かってすらいません。また、事件後も「津久井やまゆり園」では、障害者虐待が繰り返されており、とても人が生活できる場とは思えない環境で、いまもなお、尊厳を奪われて人権を踏みにじられています。
すでにご存じの通り「障害者の権利に関する条約」第19条には、「障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと。」と明記されています。例え、いくら地域に根ざした施設であっても、障害のある者を集団で収容している時点で条約に反しており、そもそも、自ら望んで施設に収容されたのではないことは明らかです。つまり、施設は「共生社会」とは程遠いところに位置しています。
今回、「多様性」というところであれだけ問題になったにも関わらず、パラリンピックの採火という神聖な取り組みの場所として、残虐な事件が起き、いまも虐待を受けている人たちがいる「津久井やまゆり園」で実施することについて全く理解することができず、強い憤りを覚えます。あの残虐な事件と今回の採火は全く別の問題であるにも関わらず、それを混同して共生社会実現への決意などという後付けの考えは、筋違いも甚だしく、よいイメージで上書きし、事件を風化させようとしているように思えてなりません。共生社会実現の意思をこのような全く筋違いの方法で国内外に発信することは、国内の障害のある者に対する侮辱であり、国際的にも人権侵害のある国として世界中に宣伝するようなもので、ハッキリ言って世界の恥です。
真の意味での「共生社会」を正しく理解し、優生思想に立ち向かう行動を起こしてください。そのためにも、パラリンピック採火の地として「津久井やまゆり園」を設定することは、白紙にしてください。

津久井やまゆり園でのパラリンピック採火に対する抗議文
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JIL Statement against Paralympic Torch Ceremony at Yamayurien_JIL_Letterhead
(津久井やまゆり園でのパラリンピック採火に対する抗議文 英訳)
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命の選別につながる
「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案」
第3条4項の削除を求める緊急声明

2020年11月30日

命の選別につながる
「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案」
第3条4項の削除を求める緊急声明

神経筋疾患ネットワーク
全国自立生活センター協議会

私たちは、日本産科婦人科学会が「重篤な障害がある場合の着床前診を承認する」と公言したことをきっかけに発足した、遺伝性神経筋疾患等の当事者で構成している団体(神経筋疾患ネットワーク)と、インクルーシブな社会の実現を目指す118の加盟団体で構成する障害当事者団体(全国自立生活センター協議会)です。

私たちは障害のある命の選別【堕胎】につながる「着床前・出生前診断」が、生殖医療技術の高度化によりどんどん拡大していくことに、かねてから障害当事者の立場から反対しています。

私たちは、本法案の「基本理念」第3条4項「生殖補助医療により生まれる子については、心身ともに健やかに生まれ、かつ、育つことができるよう必要な配慮がなされるものとする」との文言に、言葉にできない恐怖と戦慄を覚えました。
これは明らかな優生思想であり、障害者の存在を真っ向から否定する障害者差別であると強く抗議し、直ちにこの条文の削除を求めます。

この「心身ともに健やかに生まれ」という表現は、1996年に廃止されたおぞましい優生保護法と同じであり、再び同じ過ちを冒す恐れがある条文です。着床前・出生前診断によって障害のある命は未だにずっと殺されています。私たち障害者は常に、価値のない者として、その命を軽視され続けています。障害のある人は不幸せで世の中に要らない命なのでしょうか。

もう私たちを殺さないでください。要らない命などありません。これは人権侵害法案の何物でもありません。
誰にも人の幸・不幸を決め付けることは許されません。そのような価値判断こそが、今も後を絶たない肉親による障害者殺人や、出生前・着床前診断による堕胎につながっている優生思想です。そして2016年7月26日に起きた津久井やまゆり園重度障害者虐殺事件も人々の根っこにある優生思想が引き起こしたものです。

私たちが実現したいのは、どんな命も歓迎される社会です。今を生きる、未来に生まれてくる、障害を持つ子どもたち、障害を持たない子どもたちのためにです。彼らが安心して生まれ、尊厳を守り、ともに育つことができる社会こそインクルーシブで幸せな社会です。国はその実現にのみ寄与するべきです。

以上

【連絡先】
全国自立生活センター協議会
192-0046
東京都八王子市明神町4-11-11シルクヒルズ大塚1F
TEL:0426-60-7747 FAX:0426-60-7746
E-MAIL:office@j-il.jp

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船形コロニー建て替えへの抗議と地域生活の推進
・脱施設化を求める声明

2020年9月10日

船形コロニー建て替えへの抗議と地域生活の推進・脱施設化を求める声明

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり

全国自立生活センター協議会(JIL)
代表 平下耕三

 私たちは、どんなに重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、地域の中で共にある社会の実現を目指して活動する障害当事者団体である。

 さて、9月1日に宮城県の知的障害者支援施設「船形コロニー」が建て替えられ、「船形の郷」としてスタートしたが、最終的には300名の定員になると報じられている。これは、我が国が批准している障害者権利条約が求める脱施設化に逆行する政策であり、抗議の意思を表明するとともに、地域生活の推進・脱施設化の取り組みを求めるものである。

 宮城県福祉事業団は、船形コロニーを2010年までに解体し、入所者全員を地域生活に移行させる「施設解体みやぎ宣言」を2002年に発した。さらに2004年には浅野史郎知事(当時)が「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を発表し、宮城県内にある知的障害者の入所施設を解体して、知的障害者が地域の中で生活できるための条件を整備することを宮城県の障害者施策の方向とすることを宣言していた。しかしながら、村井嘉浩知事によって方針が修正され、船形コロニーが建て替えられ、地域移行が進められないままに大規模収容施設が存続している。

 我が国が2014年に批准した障害者権利条約第19条では、締約国に対し「全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる」ことを求めている。

 さらに、「(a) 障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと」「(b) 地域社会における生活及び地域社会への包容を支援し、並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(個別の支援を含む。)を障害者が利用する機会を有すること」としている。

 さらに、19条に関して、国連・障害者権利委員会が2017年にまとめた文書(一般的意見・第5号)には、「第19条の下での障害のある人の権利の尊重は、締約国が施設収容を段階的に廃止しなければならないことを意味する。締約国による新規の施設の建設は認められず、古い施設も、入居者の物理的安全の確保に必要な最も緊急の措置以上の改築は認められない。

 施設は拡大されるべきではなく、施設を出る者の代わりに新規の入居者を入れるべきではない」と明確に記されている。このように、船形コロニーの建て替えは、世界的な潮流に逆らい、障害者権利条約の諸規定に反するものと言わなければならない。

 どんなに建物をきれいにし、接遇の改善が図られたとしても、少ない人数で大勢に対応するというのが施設運営の手法であることから、どうしても入所者の生活は管理的になり、個々の行動や選択の自由は制限される。そうした空間、環境下での虐待事例は未だ後を絶たない。

 今年新型コロナウィルス感染症のパンデミック対策として世界各地で都市のロックダウンがなされ、日本でも緊急事態宣言により外出の自粛が呼びかけられた。これにより世界中の人々がほぼ同時期に行動と選択の自由を奪われ、他人に制限されるということの不自由さがどういうものであるかを経験したはずである。入所施設での生活とは、コロナ禍で皆が経験した不自由さを終わりなく続けることと同様と言っても過言ではない。

 障害者は、必要な支援を受けることが出来れば、地域で自立した生活を送ることができる。現在福祉先進国と言われる北欧諸国をはじめ、多くの国々もかつては大規模な入所施設が障害者施策の中心であった時代があったが、これは人権侵害にあたるという反省から、脱施設への政策転換が進められた。

 一方、我が国では、21世紀に入ってから地域移行の取り組みは一定進められてきたが、障害者権利条約批准以後、地域移行は進展するどころか、国の基本方針が見直される度に、その数値目標は下げられ続けてきている(15%→12%→9%)。家族依存の制度の下、地域生活を支えるサービスや体制、予算の不備・不足が背景にある。

 先ほどの障害者権利委員会の文書では、「障害のある人のあらゆる形態の孤立、隔離又は施設収容を撤廃するために、脱施設化のための明確な、的を絞った、具体的な時間枠と適切な予算を伴う戦略を採用すること」を締約国に求めている。

 ところが、我が国は未だに「脱施設化のための戦略」が不在な状態にある。今回の大規模施設の建替えの背景には、こうした国策レベルにおける問題があることもあわせて指摘しなければならない。

 宮城県には、ぜひとも障害者権利条約の理念を再確認し、見守り支援も含んだサービスである重度訪問介護や小規模で生活するグループホーム等地域支援サービスを拡充し、障害者の地域生活を推進し、脱施設化を進めることを強く求める。併せて、マスコミ各社においても、障害者権利条約に照らし合わせることなく建て替えに好意的な報道を流したことに問題はなかったのかを検証し、何らかの形で検証結果を公表されることを求める。

 さらに、国に対して、障害者権利条約の批准国にふさわしい「脱施設化のための戦略」を障害当事者参画の下で作成し実行することを求めるものである。

 


団体でご賛同頂ける方は団体名を、個人でご賛同頂ける方はお名前をご記入ください。

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Word
http://j-il.jp/temporary/20200911.docx

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京都ALS女性殺害事件に対する声明

 

2020年7月30日

 

全国自立生活センター協議会
認定NPO法人DPI日本会議
NPO法人 ALS/MNDサポートセンターさくら会
NPO 法人 境を越えて
呼ネット(人工呼吸器ユーザーネットワーク)
バクバクの会~人工呼吸器とともに生きる~
神経筋疾患ネットワーク
(順不同)

 

私たちは、どんなに重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、地域の中で共にある社会の実現を目指して活動する障害当事者団体です。

京都市で昨年11月、筋萎縮性側索硬化症(ALS)で障害福祉サービスの重度訪問介護を利用し、24時間の介助体制で自立生活を送る林優里さん(当時51歳)を殺害したとして、元厚生労働省技官で医師の大久保愉一容疑者と、医師の山本直樹容疑者が逮捕されました。

捜査関係者によると、林さんは以前から周囲に「安楽死させてほしい」と話しており、2人とは会員制交流サイト(SNS)を介して知り合い、直接の面識はなく、林さんからの依頼を受けて、 昨年11月30日夕方、京都市にある林さんの自宅を訪れ、大量の薬物を投与し、殺害したとみられています。大久保容疑者は「高齢者は見るからにゾンビ」などとネットに仮名で投稿し、高齢者への医療は社会資源の無駄、寝たきり高齢者はどこかに棄てるべきと優生思想的な主張を繰り返し、安楽死法制化にもたびたび言及していたとのことです。
そして、とうとうALSという難病により常時介助を必要とする重度障害のある林さんの死に手を下してしまいましたが、この行為にSNS上で多くの人が容認する意見を寄せていることは、すべての障害のある者にとって恐怖以外の何物でもありません。また報道では、「安楽死」という言葉がクローズアップされていますが、『この事件はネットを介した殺人に他なりません。』

また、今回の事件を受けて、「安楽死法」「尊厳死法」の議論を進めようと言った主張が持ち出されてきていますが、安楽死・尊厳死の合法化などもってのほかです。生きているのが辛いから自ら死を選ぶという意味では、尊厳死も安楽死も自殺と一緒ではないでしょうか。自殺対策大綱で「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指す」と掲げ、国をあげて自殺率を減らそうとしている一方で、尊厳死や安楽死を法制化しようというのは矛盾以外の何者でもありません。自殺者としてカウントしなければ良いという問題ではないと考えます。

被害者の林さんは24時間介護サービスを受けていて、地域生活・自立生活が保障されていても、このような殺人事件が起きてしまいました。そして、SNSを通して多くの人が、安楽死を強く望んだ林さんに同情と賛同を寄せていることの根底には、「生産性のない重度障害者は生きる価値がない」という誤った論調があります。

そもそも人は本来生きていることそれ自体で認められるべきなのです。怖いのはいつも命に対して少数派が除外され、多数派の価値で測られ、それが全てであるかのように扱われることです。
私たちは、被害者の林さんがどのような悲しみを抱えていたか、介護現場が抱えていた課題は何なのかを検証することを求めます。そして、障害を理由に「安楽死させてほしい」と思わなくてもよい社会の構築を訴えます。

私たちは、これからも社会的サポートが必要な人でも一人の人間として尊重され、「生きる権利」が大切にされる社会、「生きる」選択が妨げられることなく、だれもが自分らしく最後まで生きたいと思え、それが当たり前に叶う社会の在り方を強く訴え続けていきます。

 

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「相模原障害者殺傷事件」から4年
コロナ禍の中で迎える7.26声明

4年前の今日、2016年7月26日、神奈川県相模原市にある津久井やまゆり園に入所していた方々が襲われ、19人もの尊い生命が奪われ、26人が重軽症を負わされた「相模原障害者殺傷事件」が起きた。事件から4年を迎える今年3月31日、事件の犯人である植松被告に対して死刑が確定した。私たち障害当事者や家族、支援者らは、事件直後からこの事件の背景や原因は、死刑囚となった植松個人だけの問題ではなく、差別や偏見を払拭できず優生思想を生み出している社会(過去の過ちからの教訓を活かしきれず人権意識の低い福祉・教育等の制度・施策・環境・報道の歪み等)の側にこそあると考え、裁判を通じてそれが究明されることを期待した。判決文では、「犯行動機の中核である被告人の重度障害者に関する考えは、被告人自身の本件施設での勤務経験を基礎」として、津久井やまゆり園における入所者への対応状況が背景にあったことは明言されたものの、裁判では植松個人の責任能力の有無に焦点が当たり、彼の「重度障害者は不幸しか作れない」、「殺した方が社会の役に立つ」という主張の背景や原因を深く掘り下げることはできずに結審した。

他方、本件とは別に津久井やまゆり園での他の職員による利用者への虐待案件、不適切対応等があったことが明らかになった。量刑が確定したとはいえ、史上最悪となった障害者殺傷事件の舞台となった津久井やまゆり園における虐待事例の検証を曖昧にしたままでは、本事件の本質的な解明にはつながらない。判決で明らかになったとはいいがたい植松死刑囚の直接的犯行動機の形成過程が、職場での環境等と関係があったのかなかったのか、今後丁寧に検証される必要があることは明らかである。

裁判の行方はそれなりに世間に注目はされたが、全世界的な新型コロナウィルス感染症のパンデミックの中、死刑確定と共に急速に世間の関心度が低下している。事件を風化させず「共に生きる社会とは何か」を考え続けるために毎年開催してきた追悼集会は、コロナ禍で今年の開催は見送らざるを得なかった。いま、過去の事例から植松死刑囚の早期執行を予測する報道も出始めているが、刑の執行では事件の本当の解決は望めない。世界中のコロナ禍で、人権意識の高いと思われていた国々でも障害や高齢を理由とした命の選別が行われたり、検討されはじめている。いわば生産性の有無や高低を基準としたものであり、「優生思想の復活あるいは容認」が再び広がりかねない。他方、ロックダウンにより自由な行動や判断を他人に制限される不自由を世界中の人々が経験し、そうした自由を剥奪された環境では、虐待事例が増えることも実証された。また障害のある人の感染リスクは、在宅より入所施設の方が高いことも国内外の事例から判明しつつある。第二、第三の植松の誕生を招くことなく、優生思想を根絶し、差別や虐待を防ぐための方策の必要性を、このコロナ禍は指し示している。「新しい日常生活」という、「これまでの日常生活」の中での権利性を奪う時代状況の中で、事件を風化させてはならない。

また、神奈川県は、これまでの「津久井やまゆり園利用者支援検証委員会」を発展改組した「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」(以下、検討部会)を設置し、津久井やまゆり園を含む6つの施設における支援の在り方などの検証を行うとしている。ここでは津久井やまゆり園事件の背景やその一つとされる虐待についてもきちんと検証されなければならない。私たちはこの検討部会の動きに注視していく。

さらに、直前の7月23日に京都でALS患者の安楽死事件が発覚し、2人の医師が逮捕された。7月24日の京都新聞の報道によれば、『医師2人のうち大久保容疑者は「高齢者は見るからにゾンビ」などとネットに仮名で投稿し、高齢者への医療は社会資源の無駄、寝たきり高齢者はどこかに棄てるべきと優生思想的な主張を繰り返し、安楽死法制化にたびたび言及していた。』という。今後より詳しい真相の解明がなされると思うが、植松死刑囚の考え方との共通性に強い危機感を抱く。この事件を契機に「尊厳死の法制化」を議論する必要性に言及する声も出始めているようだが、私たちは、かねてから現状での尊厳死法制化に反対しており、今回の事件においても、ご自身がALSの当事者である舩後参議院議員が発信された『「死ぬ権利」よりも、「生きる権利」を守る社会にしていくことが、何よりも大切です。どんなに障害が重くても、重篤な病でも、自らの人生を生きたいと思える社会をつくること』をはじめ、他の「生きる」選択をされた多くの当事者の方々が発信されている声を重く受け止めるべきと考える。

事件から満4年の今日、私たちは、改めて事件の風化を阻止し、障害によって分け隔てられないインクルーシブ社会の実現を目指して行動していくこと事を誓う。そして、社会のあらゆる人々に、ともに考え行動していくことを強く期待する。

2020年7月26日

認定NPO法人 DPI日本会議
全国自立生活センター協議会(JIL)
「ともに生きる社会」を考える神奈川集会・実行委員会
(順不同)

 

津久井やまゆり園2020.7.26声明(PDF)

津久井やまゆり園2020.7.26声明(word)

津久井やまゆり園2020.7.26声明(テキスト)

医療法人財団兵庫錦秀会 神出病院(兵庫県神戸市)で発生した虐待及び暴行等事件に対しての要望

2020年7月3日

神戸市市長
久元喜造 様

全国自立生活センター協議会
東京都八王子市明神町4丁目4番11号
シルクヒルズ大塚1F
代表 平下耕三

医療法人財団兵庫錦秀会 神出病院(兵庫県神戸市)で発生した
虐待及び暴行等事件に対しての要望

私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、地域の中で共にある社会の実現を目指して活動する障害当事者団体である。全国120ケ所を越える障害当事者団体(自立生活センター)で構成している。

医療法人財団兵庫錦秀会 神出病院(兵庫県神戸市)において入院中の患者さんに対して虐待・暴行・強制わいせつなどを行ったとして、看護師ら6人が2020年3月4日に逮捕された。
新聞報道などによると、入院患者に対し、裸にしてトイレに座らせ水をかける、患者を寝かせベッドを逆さにして監禁する、男性患者同士強制的にキスをさせる、性行為を強要するなど、人権を無視した非人道的で卑劣極まりない行為を看護師らが夜の巡回の時間に防犯カメラのない部屋やトイレで繰り返し行い、その様子を動画に撮影しSNSで共有していたということが明らかになっている。

上記事件は宇都宮事件や箕面ヶ丘病院事件と同列あるいはそれ以上に精神障害者の人権を侵害した事件でありこのような事件の発生はもちろんのこと、神出病院事件で発生した事件がきっかけで神出病院を始め日本全国の精神科病院で入院中の精神障害者の行動規制や入院処遇が今以上に劣悪にならないよう再発防止策を講じる必要がある。

長期に及ぶ精神障害者に対する隔離収容施策・社会的入院(長期入院)が今回の事件の一因と我々は考えており、精神科病院の社会的入院の早期解消が急務である。精神障害者も病院でなく地域で健常者と同じように当たり前に暮らせる社会であればこのような事件は起こらなかったと推測される。

我々は深い悲しみと怒りを感じており、このような精神障害者の人権がひどく侵されたことに対し断固抗議し、下記12項目の要望をする。以下に対して7月31日までに文書で回答を求める。

【責任の所在について】
1.事件を容疑者個人の問題として裁判所の判決だけに委ねるのではなく、神出病院の人権意識の欠落、神戸市の監査が機能していなかったことに原因があることを神戸市が把握し監査強化を行う等、再発防止策を講じること。

【被害調査について】
2.神出病院に入院している全ての入院患者に対して第三者機関へ委託し(弁護士・人 権保護団体等を構成員として加えること)虐待・暴行の被害調査を行うこと。

【権利擁護・転院・退院促進について】
3.神出病院で入院患者が退院や転院の意思を言葉や文章だけでなく何らかの形で表明した場合は、神戸市は必要な資源を速やかに提供し、入院患者が希望する生活を送れるよう援助すること。同時に精神障害者の地域生活・自立生活に向けた支援体制を整え、いつでも地域で安心した生活が送れるように配慮すること。

【神出病院への指導】
4.神出病院が入院している患者に対して事件を分かりやすく丁寧に説明・謝罪を行えるよう神戸市が指導を行うこと。

5.「虐待・犯罪行為防止のため」という趣旨で、監視カメラを増やすことや管理体制 を強めることは患者のプライバシー・人権を著しく侵害する。神出病院ではすでに監視カメラの新規増設を公表している。即刻に撤去を指導し、監視カメラに変わり医師、医師以外の専門職の増員などによる患者の安全と人権を守るよう神戸市として指導すること。

【情報の公開】
6.神戸市が調査した調査結果や対応を隠すことなくマスコミなどに公表すること。

7.今回の事件は継続的に犯行を行っていたと容疑者が供述しているが、神戸市が昨年度行った神出病院への通称630調査結果を公開すること。また調査時に患者や職員へ虐待についての聞き取り調査などを行ったか具体的に回答すること。

【人権研修の実施】
8.虐待事件は患者側の問題ではなく、神戸市の監査不備、病院の運営体質、人権意識の欠落が一因であり、病院運営者・医師・医師以外の専門職などに対し人権研修を行うこと。職員が人権意識を保つためには障害当事者からの人権研修が最も大切である。従って、研修実施の際には障害者団体及び精神障害当事者を入れること。

9.事件を未然に防ぐためには、精神科病院の透明性が重要である。今後、神出病院を含む神市内の全ての精神科病院に対し、行政の調査とは別に人権活動をしている障害者団体に病院訪問及び調査を委託し、精神科病院の閉鎖性を解消していくこと。

10. 2、8、9の項目の人権活動している当事者団体・個人についてはその実績を考慮しつつ、公平性を保つために、神戸市とは独立した団体からの公募で決めること。

【精神医療審査会について】
11. 精神科病院での虐待事件が繰り返し起きる要因として、退院請求・処遇改善請求が上がりにくい、形骸化しているなどの問題がある。神戸市はこの問題について 解決するよう取り組み、例えば、退院請求・処遇改善請求を患者ができるように、わかりやすくいリーフレットをつくり患者に配布するとともに、退院請求についてわかりやすい場所に掲示するなど実践的な取り組みをすること。

12.精神医療審査会の審査で退院請求や処遇改善請求が上がった場合には、請求を行った本人に会いに行き精査すること。また、退院請求・処遇改善請求を行えるように病院外部のアドボケーター(弁護士・当事者団体等)が病院訪問を行えるよう環境整備を行うこと。

以 上

<連絡先>
全国自立生活センター協議会
〒192-0046東京都八王子市明神町4-11-11-1F
TEL:042-660-7747 FAX:042-660-7746

 

医療法人財団兵庫錦秀会 神出病院(兵庫県神戸市)で発生した虐待及び暴行等事件について、適切な対応を求める要望
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介助の必要な障害者・児が新型コロナウィルス感染症に感染した場合の対策に関する要望

2020年5月11日

厚生労働大臣
加藤 勝信 様

介助の必要な障害者・児が新型コロナウィルス感染症に
感染した場合の対策に関する要望

全国自立生活センター協議会(JIL)
NPO法人 ALS/MNDサポートセンターさくら会

貴省におかれましては、このコロナ禍において臨機応変な様々な規制緩和や対策にご尽力いただき、感謝申し上げます。

 

私たちは、1日24時間等の常時介助を必要とする重度障害者を中心に、全国各地にある加盟団体において障害者の自立支援に関係する様々な活動をしておりますが、中でも訪問系の介助サービス事業は障害者の自立生活と生命を支える根幹であり、必要不可欠なものとして実施しています。

現在世界中を震撼させている新型コロナウィルス感染症の脅威は、当然障害者にも、介助者にも襲いかかってきます。幸い、今までのところ、加盟団体の介助利用者にも介助スタッフにも感染者(PCR検査陽性者)は発生しておりませんが、今後いつ発生してもおかしくない状況が迫っていると、日々戦々恐々としております。もちろん、考え得る感染防止対策を講じ、その徹底に努めておりますが、一度感染者が発生してしまうと介助サービスの継続が非常に困難になることは明らかです。

介助サービス提供者として目下の悩みは、

  • 利用者も介助者も、感染の疑わしい症状があっても、PCR検査のハードルが高過ぎて、ほとんど検査を受けさせてもらえないため、不安ばかりが募り、介助体制の維持が困難。
  • 各センターの介助サービス利用者、スタッフに、一人でも感染者が出た場合、介助サービスの提供がどこまで維持できるのか?
  • 入院が難しい重度障害者が感染した場合、実際にどこまでの装備が可能なのか?(簡易陰圧室、陽圧ヘルメットを手作りして、完全防備で介助など)
  • また、装備が揃ったとしても、在宅でどこまで対応が可能なのか?(専属の介助体制の構築、使用品との管理など)
  • 介助者が行くのを拒否した場合、休業補償ができるのか?(あるいは、感染した場合の補償はどうするのか?)
  • 強度行動障害のある知的障害者など、どのように対応するべきか?(外出自粛困難。本人はマスクを外してしまう他、介助者のマスクも取ってしまう。外であちこち触った手で介助者の顔や体をいっぱい触ってくる。飛び出し防止のため、外出時は常に密着している必要があるetc…)
  • さらに⑥のような人が感染(陽性反応)しても、症状が軽く在宅療養となった場合、外出を抑制できるのか?(今まで否定してきた身体拘束や薬剤使用を容認するしかないのか?)
  • たとえ入院したとしても、医療体制が逼迫している中で、身体拘束、薬剤使用意外に行動抑制の手立てはあるのか?(人権保障はできるのか?)

考えれば考えるほど出口の見えないブラックホールに吸い込まれていく感じであり、これはとても一事業所だけで解決できる問題ではないと思います。

是非、国としても、更なる対策を講じていただきたく、以下の通り要望いたします。


  1. 体調不良や感染者の接触者等で、感染の疑いが生じた障害者・児、及びそのヘルパーや家族は、速やかにPCR検査を受けられるようにしてください。
  2. その上で、感染した障害者・児の介助に入った場合の介護報酬を、医療者と同様に増額してください。
  3. 治療の有効性があるとされる薬剤の報告が出始めています。感染した障害者・児が在宅療養となった場合、治療の有効性が認められる薬について、難病など基礎疾患がある人への投与の安全性を確認の上で早期に承認し、訪問診療での使用を可能にしてください。
  4. ※地域単位での感染防御資材の配備の仕組み(要介護状態にある陽性者・濃厚接触者に在宅医療・介護チームが対応する必要が生じた際に即時対応できるように)を構築してください。
  5. ※介護職にも分かりやすい感染防御の知識・技術の周知(陽性者・濃厚接触者に対応する医療 職・介護職・家族そして本人が正しい知識と手技を獲得できるための支援)の支援をしてください。

※「COVID-19陽性者対応を見据えた在宅医療・介護現場への 感染防御資材等供給支援プロジェクト」ご参照
https://covid19hc.info/wp-content/uploads/2020/04/ppe.pdf

以上

<連絡先>
全国自立生活センター協議会【JIL新型コロナウィルス対策本部】
https://jiloffice1991.wixsite.com/jilcoronataisaku
〒192-0046東京都八王子市明神町4-11-11-1F
TEL:042-660-7747 FAX:042-660-7746

介助の必要な障害者・児が新型コロナウィルス感染症に感染した場合の対策に関する要望~
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COVID-19陽性者対応を見据えた在宅医療・介護現場への 感染防御資材等供給支援プロジェクト~
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JIL新型コロナウイルス対策本部HP開設

先月に組織されたJIL新型コロナウイルス対策本部では、MLにてご連絡しておりますようにホームページを作成して各種情報の共有を行っております。

随時情報を更新しておりますので、どうぞお役立てください。

ホームページへは以下リンクから

https://jiloffice1991.wixsite.com/jilcoronataisaku

 

​JIL新型コロナウイルス対策本部設立趣旨
世界中で猛威を奮っている新型コロナウィルス(COVID-19)は、他国の状況に比べ日本での感染はまだギリギリ大爆発を抑えられてはいるようにみるが、感染の急激な広まりの危険性は続いている。JILは、どんな重度な障害があっても必要な支援を受けながら自分の住みたい地域で暮らすことを支えている自立生活センターの全国組織であり、加盟団体の多くが訪問系サービス事業を行っており、生活介護や就労支援といった通所系サービス事業を行っている団体も少なくない。今のところ(2020年3月31日現在)加盟団体のスタッフ、利用者共に感染者発生の報告は出ていないが、誰もが感染してもおかしくない状況になってきていることから、各センターが考え得る必要な対策を迅速に取ることが求められる。
そこで、情報の冷静な分析と共有をすることを目的に、JIL事務局内に対策本部を設立し、専用ホームページを作成し情報を提供する。

新型コロナウイルス下での生きる権利
~リスク下にある障害者たちからの緊急声明~

WIN
WORLD INDEPENDENT LIVING CENTER NETWORK
2020年4月21日

Our Rights to Life during the Covid-19
– Emergency Statement from Persons with Disabilities at Risk-

新型コロナウイルス下での生きる権利 
~リスク下にある障害者たちからの緊急声明~

World Independent Living Center Network(WIN)

 私たちは、どんなに重度な障害があっても、地域の中で自立した生活を送れるように支援する自立生活センターの世界的なNetworkである。2017年7月にアメリカのワシントンDCで開催したグローバルILサミットを契機に結成され、国境を超えて障害当事者が連帯して活動をしている。

 現在、新型コロナウィルスが世界中に猛威を振るう中、障害者が障害を理由に必要な支援を受けられず、取り残された状況が起きていることに危機感を感じている。2007年に採択された障害者権利条約は、障害に基づくいかなる差別を禁止し、すべての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現し、促進することを求めている。また、2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)では、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。

 私たちはこれらの理念を踏まえて、障害者のニーズや選択、尊厳が尊重されなければならないこと改めて世界の国々に訴える。そして、世界中の障害者が差別なく必要な支援を受けて、市民としての尊厳が守られて生活できるように、以下、各国の政府に求める。

1.障害を理由とした命の選別を許さない
すでに、いくつかの国では、障害者は救命救急、人工呼吸器等の重症患者の治療対象にならないというガイドラインを策定していたり、高齢者が装着している人工呼吸器を外して、より若く治療効果のある人に付け直すということが起きている。これは障害を理由とした命の選別である。どのような障害があっても、命の価値は同じである。障害理由とした命の選別は決して行われてはならない。

2.必要な医療を平等に提供されること
障害者が感染した場合、障害を理由として差別されることなく平等に必要な医療を受けられ、命が尊重されること。また、診察、検査、治療の過程において、PAや支援者、通訳者など、障害に応じて必要な人員を確保し、彼らの感染防止策を提供(保障)した上で、同伴も認められること。

3.必要な情報をアクセシブルな方法で提供されること
聴覚障害者、視覚障害者、盲ろう者、知的・発達障害者等が必要な情報を得られるように、アクセシブルな方法(手話、字幕、点字印刷、音声対応、わかりやすい形での情報提供)で情報提供がされるように配慮すること。

4.地域で自立した生活を継続し、感染の予防措置がとれるように、介助サービスや支援を継続して受けられるようにすること
障害者が生活するためには、介助サービス等の支援を継続して受けることが不可欠である。画一的で配慮のない外出制限を行うなどして、介助者や支援者が障害者の家にいけないこと、介助サービスの提供を打ち切ることがないように必要な措置を講ずること。さらに、障害者、介助者の感染予防のためにPPE-パーソナル・プロテクティブ・イクイップメント(マスク、アルコール、手袋など)を配給すること。

5.経済的な支援の実施・継続・拡大または新たな救済措置が貧困層の障害者にも行き届くようにすること。
障害者の8割は貧困層であり、より一層経済的なダメージを受けやすい立場にある。経済的な支援が障害者にも差別なく行き届くように必要な措置を講ずること。とりわけインターネットなどの情報へのアクセスが困難な障害者とその家族等に対し、合理的配慮を徹底した情報提供と受給手続き等の簡素化を行い、誰一人取り残さないインクルーシブな経済措置を講ずること。

6.情報が不可欠であるため、障害者の声が常にさまざまな緊急委員会で考慮に入れられ、予防策についても障害者団体等と常に相談するよう要望する。障害のある人々をラベルを付、差別する、または隔離する措置ではなく、真にインクルーシブな対策を講ずること。

 

新型コロナウイルス下での生きる権利~リスク下にある障害者たちからの緊急声明~(PDF版)

新型コロナウイルス下での生きる権利~リスク下にある障害者たちからの緊急声明~(ワード版)

新型コロナウイルス下での生きる権利~リスク下にある障害者たちからの緊急声明~(テキスト版)

 

WIN(circle logo)
WORLD INDEPENDENT LIVING CENTER NETWORK

Our Rights to Life during the Covid-19
– Emergency Statement from Persons with Disabilities at Risk-

April 20, 2020
World Independent Living Center Network(WIN)

 We are global network of Independent Living Centers that support people with disabilities to live in the community regardless of the severity of their disabilities. This network was established in July 2017 at the Global IL Summit in Washington, DC and since, people with disabilities across borders are coming together to carry out activities and missions.

With CORONA VIRUS (COVID-19) is raging around the world, we are facing alarming crisis that people with disabilities are left behind and unable to receive crucial support that they need. UN Convention on the Rights of Persons with Disabilities (UNCRPD, adopted 2007) prohibits discrimination against persons with disabilities and reaffirms that all persons with all types of disabilities must enjoy all human rights and fundamental freedoms. Moreover, SDGs, adopted at UN in September,2015 pledged that NO ONE WILL BE LEFT BEHIND.

 With these concept and principles in mind, we call attention of the world that the needs, self-determination and the dignity of persons with disabilities must be respected. To ensure that persons with disabilities around the world will receive necessary support without being discriminated and to live with their dignity as citizens are protected, we make following appeals to governments of all nations.

  1. We will not allow disability-based life screening/selection.

Already, some countries have been practicing or issuing guidelines that disqualify persons with disabilities from getting emergency treatments or administering ventilators for patients with severe symptoms due to COVID-19. This is a practice of eugenics based on disability. The value of life is equal regardless of different types of disabilities. The screening/selection of life based on disability should not be allowed under any circumstances.

  1. Provide equal medical treatment for persons with disabilities.

If/when persons with disabilities get infected, they should receive necessary treatments equal to others and the value of their lives MUST be respected.  During the course of diagnosis, exams and treatments, personal attendants (PAs)or service provider, as well as interpreters should be provided and be allowed to accompany based on the needs of persons with disabilities.

  1. Provide information with accessible format.

Persons who are deaf, blind, deaf-blind and persons with intellectual or developmental disabilities need alternative format to access information. (Sign Language, captioning, braille, audio-description and other formats that are easily understood.)

  1. Ensure PA services and other supports so that people with disabilities continue to live independently in the community, taking necessary precautionary measures against the virus.

In order for persons with disabilities to live on, it is essential to receive services such as PAs. Take necessary measures to ensure PAs and service providers can visit persons with disabilities at their residence even under the situation where government is restricting people to go out. Moreover, provide necessary PPE(Personal Protective Equipment) such as masks, gloves, alcohol, etc., for persons with disabilities and PAs.

  1. To ensure new and existing economic and financial assistance to be implemented, continued and expanded to reach persons with disabilities, particularly those living in poverty.

80% of persons with disabilities live in poverty, and are in a position to be more susceptible to economic damage. Take the necessary steps to ensure that financial assistance reaches persons with disabilities without discrimination. Take INCLUSIVE economic measures that LEAVES NO ONE BEHIND by providing reasonable accommodations for information access and simplified procedures for receiving payments/subsidies, especially for persons with disabilities and their families who have difficulty accessing information on the internet.

  1. As information is essential, we ask that the voice of Persons with disabilities be ALWAYS taken into account in the different Emergency Committees, that the organizations of Persons with disabilities be consulted at all times about the prevention measures that They will be implemented so that they are truly inclusive and not measures that label, discriminate or segregate the population with disabilities.

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