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滝山病院の看護師による患者暴行事件に関しての
抗議及び要望

医療法人社団孝山会 滝山病院
管理者 朝倉重延 殿

全国自立生活センター協議会
東京都八王子市明神町4-11-11シルクヒルズ大塚1F
代表 平下耕三
精神障害プロジェクト一同

滝山病院の看護師による患者暴行事件に関しての抗議及び要望

 私たちは全国120か所にある、障害者の権利擁護と地域での自立生活を実現する「自立生活センター」の集まりです。私たちは障害の種別を問わず、人として尊厳をもって地域で自立生活することをサポートし、また地域社会の変革に取り組んでいます。

 2023年2月15日のマスコミ報道で、昨年4月に滝山病院の看護師が患者に暴行をはたらいた容疑で警察に逮捕される事件が発覚しました。警視庁はさらに3人が暴行をはたらいた容疑で捜査をしていると報道されています。この様子は監視カメラに「しゃべるな、黙ってろ」と頭を叩く場面が収められており、はっきりと暴行の場面が映されています。

 患者を支援する代理人弁護士の2月17日の記者会見によると、「患者約10人から、虐待を受けたとか退院したいとの相談があった」「院内で記録された映像や音声などを分析したところ少なくとも10人以上の職員が暴行や暴言などの虐待行為を行った可能性がある」「被害にあった患者は少なくとも20名になる」と指摘されています。音声データには「もっと本気で行くぞ。腕の骨折るぞ」などの録音もされ、面会時に弁護士に泣きながら「連れて帰ってほしい」と訴えた患者もいたと言います。さらには東京都の昨年の6月の実地調査により「国から求められている看護師らを対象にした虐待や人権に関する研修を、十分に行っていない」と口頭指導を受けています。また違法な身体拘束の疑いがあると報道され、このような状況から暴行・暴言は昨年の1月から4月にかけてだけ行われたとは考えにくく、日常的に暴力行為が蔓延し、それを管理者が見過ごしていた可能性が深く懸念されます。症状や強制入院で自由に退院することができない患者に対し、日常的に暴言・暴力・安易な身体拘束を行うことは、医療従事者としてあり得ない非人道的な行為であり、人間の尊厳を奪う決して許せない行動です。私たちは障害当事者として激しい怒りと憤り、深い悲しみを抑えることができません。

 そして更に、2月25日にNHKで放送されたETV特集「ルポ 死亡退院 ~精神医療・闇の実態~」で明るみにされた内容はあまりにも衝撃的でした。

 昨年の10月には国連障害者権利委員会から総括所見が出されており、その中で精神科病院での身体拘束、強制入院、虐待などの人権侵害行為は直ちに是正することが求められています。私たちは、一昨年神戸市において発覚した神出病院の虐待事件が大きく問題視された中、自らの病院内の虐待を見過ごし、人権侵害を放置した管理者と病院の責任を追求するとともに、患者の人権を軽視した病院運営と現場の人権意識の乏しさに厳重に抗議し直ちに対策を講じるとともに、放送されたような実態が真実であれば、滝山病院の解体と廃業を強く求めます。

<直ちに行うこと>

  1. 警察や行政への全面的な協力、情報提供と第3者機関による徹底した調査や患者一人一人への聞き取りを行い、虐待の全容を隠すことなく明らかにし、市民に報告すること
  2. 病院管理者、経営者は東京都の口頭指導を受けていたにも関わらず放置し、このような事件を起こした責任をとること
  3. 虐待を受けた患者のみならず、すべての患者に精神的なケアを行い、退院・転院希望の調査、希望者に対する退院・転院を滞りなく進めること
  4. 内部通報者が不当な取り扱い、不利益を被ることのないよう対策を講じ、その対策を公表すること
  5. 現場の医師・看護師のみならず病院管理者、経営者を含めたすべての人に、人権教育を直ちに行い、2度とこのような事件の起こらないよう、現場の改革をすること
  6. 病院関係者への人権教育にあたっては、長年障害者の権利擁護を行っている当団体の人権委員会が開催する「障害者虐待ワークショップ」など当事者視点での人権研修を取り入れ改革を進めること

通常であれば医師、看護師等職員の人権教育を徹底した上、病院運営を改革して新しい体制を作ることを要望するところであるが、2023年2月26日にNHKで放送された内容を踏まえると、暴力・虐待事件、病院運営体制、方針が社会的に許される事柄ではないことから、滝山病院は警察、行政、第3による調査委員会に全ての記録と真実を述べ、実態を明らかにした上で、全ての責任をとり滝山病院は病院を解体し、廃業すること。

<解体・廃業を求める理由>

  1. 多数の職員が人権を無視した暴言、暴力を日常的に行なっていたこと
  2. 弁護士との面会は患者の権利であるが、実際患者が患者が面会をすると、後から暴言・暴力を加えること
  3. 看護師長、ベテランの看護師は本来新人看護師に対し、正しい記録の書き方、人権を守り看護の大切さを教えるところ、自分達の病院側の都合の良いやり方で人権を無視したやり方をそのまま教育していること
  4. カルテに虚偽の書き込みをしていたこと
  5. 録音された音声によれば看護師長院長も暴行やカルテの虚偽の記録を承知していたこと
  6. 死亡退院が全体の78%という異常な数字であること
  7. 根本的な糖尿病などの身体的疾患が悪化していても治療をせず、時には床ずれを深部組織が見えるほど放置し悪化させ、生命だけを長引かせるだけの対処をしていること
  8. 医療保護入院時、医師が威圧的な診察をした上で、患者に虚偽の出来事を作り出し、行政に対しても虚偽の報告をしたこと。また家族に対しても虚偽の報告をしたこと
  9. 医院長は旧朝倉病院で大量の死者を出し、保険医の取り消しを受けたにもかかわらず、今回また病院運営者として復帰し、虐待、虚偽の報告、人権無視など前回同様の虐待行為をしていること

2023年3月1日

 

滝山病院の看護師による患者暴行事件に関しての抗議及び要望

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インクルーシブ社会はインクルーシブ教育から
~JILインクルーシブ教育プロジェクトの考える総括所見の意味~

2023年1月27日

インクルーシブ社会はインクルーシブ教育から
~JILインクルーシブ教育プロジェクトの考える総括所見の意味~

JILインクルーシブ教育プロジェクト 一同

 私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害者権利条約の完全実施に向けて障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会(インクルーシブな社会)を目指して活動する障害当事者団体です。全国110か所を超える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。
 インクルーシブな社会を実現するために、教育分野からでは、障害者権利条約第24条「教育」および一般的意見4号(インクルーシブ教育を受ける権利に関する一般的意見)に書かれているインクルーシブ教育の実現を目指し全国で活動しています。

 2022年8月、国連(スイス・ジュネーブ)で障害者権利条約に関する日本の建設的対話が開かれ、9月9日に権利委員会から日本政府へ総括所見が出されました。教育の分野からは、「障害児を分離した特別支援教育をやめる」よう強い勧告が出て、報道にも流れました。そういった報道を受け、「障害児を通常の学級で学ばせるのはかわいそう」「一緒に学ぶのは迷惑だ」などの批判や、現在特別支援学校に通う障害当事者や、保護者の方からは「特別支援教育を受けられなくなるのではないか」などの不安の声が相次ぎました。
 日本は、2014年に障害者権利条約を批准し、障害児者に関する様々な法制度が整備され、インクルーシブ教育の実現を目指しています。しかし実際の教育現場では、支援を必要としている子どもの場合は、特別支援学校や特別支援学級などの別の場で、その子どもにあった教育を受ける、というような教育システムになっています。これはいわゆる日本型インクルーシブ教育システムと言われています。「通常の学級では、一人ひとりにあわせた必要なサポートを受けづらいため、特別支援学級や特別支援学校がなくなっては困る」という考え方から、上記のような批判や不安の声が溢れたのではないかと考えられます。
 しかし今回の障害者権利条約の勧告は、特別支援教育を廃止することを求めているわけではなく、障害の有無で学ぶ場を分けることに対して危惧しているのです。そこで本会が目指すインクルーシブ教育について、改めて社会に伝えたいと思います。

1.インクルーシブ教育は、通常の学級の在り方を変えていくプロセスである
 現在の日本の教育は、多様な子どもたちがいることが前提となっているでしょうか?「多様な子ども」というのは、障害のある子どもだけではなく、性的マイノリティや貧困家庭にいる子ども、外国にルーツのある子どもなど様々な背景をもつ子どもをさします。インクルーシブ教育は、「多様な子どもたちがいることを前提とし、その多様な子どもたち(排除されやすい子どもたちを含む)の教育を受ける権利を地域の学校で保障するために、教育システムそのものを改革していくプロセスである」※1と言われています。つまり、通常の学級で、一人ひとりにあった支援が受けられるように変えていくことが求められているのです。
 通常の学級の在り方を変えていく方法としてまず考えられることは、1クラスあたりの人数を減らすことです。
それにより教員の仕事の分散化や複数担任制などが可能になるなど、教員の負担軽減につながり教員の離職率を下げることができるのではないでしょうか。
 インクルーシブ教育を進めていくことで、学校で学ぶ子どもも、学校で働く教職員も、すべての人にとって過ごしやすい学校になると考えます。
 
2.インクルーシブ教育はインクルーシブ社会につながる
 今の日本は教育課程から分離されているため、多様な人たちがともに生活しているということを気づかないまま大人になっていると思われます。そのため、いつの間にか「多数派」と呼ばれる人たちに合わせた社会になってしまっているのです。「当たり前」からはみ出てしまった人(少数派)に対する差別が生まれてしまう構造ができあがっているのではないでしょうか。障害や病気がないいわゆる健常者と呼ばれている人の中には、「多数派」になろうと無理に努力をして生きづらさを感じている人たちもいるでしょう。
 サポートが必要な人は障害者だけではありません。学校教育を受けるときから、一人ひとりが必要なサポートを受けながら学ぶことのできる環境が当たり前になっていれば、誰にでも必ずある「ちがい」が認められ、ちがいがマイナスにならない社会がつくられていくのではないでしょうか。インクルーシブ教育は、誰も仲間外れにされないインクルーシブ社会につながっていくと私たちは考えます。

3.インクルーシブ教育について一緒に考え続けること
 上記2点から、インクルーシブ教育は、障害者だけにかかわらずすべての人にとって、生きやすくなる社会につながると考えられます。だからこそ、私たちは、インクルーシブ教育の大切さや必要性について一緒に声を上げてくれる仲間を増やしていきたいのです。今、分離された社会で生きている人や現在の社会で生きづらさを感じている人たちとともに社会を変えるためにつながって考え続けていきたいです。

注釈について
※1野口晃菜・喜多一馬編著(2022).
『差別のない社会をつくるインクルーシブ教育 誰のことばにも同じだけ価値がある』.学事出版 より引用。
(以上)

 

インクルーシブ社会はインクルーシブ教育から
~JILインクルーシブ教育プロジェクトの考える総括所見の意味~

 

北海道江差町の社会福祉法人あすなろ会における「不妊処置」問題から見る、障害者の性と生殖に関する健康と権利についての声明

※声明文にやさしいバージョンを追加しました。 12月28日

2022年12月21日

北海道江差町の社会福祉法人あすなろ会における「不妊処置」問題から見る、
障害者の性と生殖に関する健康と権利についての声明

全国自立生活センター協議会
代表 平下 耕三

 私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害者権利条約の完全実施に向けて障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会(インクルーシブな社会)を目指して活動する障害当事者団体です。全国110か所を超える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。
 2022年12月18日、北海道江差町の社会福祉法人「あすなろ福祉会」が運営するグループホームで、知的障害があるカップルらが結婚や同棲を希望する場合、男性はパイプカット手術、女性は避妊リングを装着する不妊処置を20年以上前から条件化し、8組16人が応じていたことが報道されました。この問題を受けて、松野博一官房長官は12月19日の記者会見で「仮に利用者が結婚などを希望する場合、本人の意に反して、不妊手術や受胎調節などを条件とすることがあれば、不適切だ」と指摘しています。また厚生労働省が道庁に事実関係の確認を求めているとし、今後詳細が明らかになるでしょう。
 日本は、日本国憲法や障害者権利条約(2014年批准)にのっとり、障害児者にかかわる様々な法制度が整備されつつあります。今回問題になっているグループホームは、「障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活または社会生活を営む」ことを目的とした障害者総合支援法に定められ展開されている福祉サービスの一つです。障害者が他の者と平等に個人として尊重され自分らしい生活を送るために整備されている福祉制度の中で、障害者の人権を踏みにじる事件が起きたことは、障害当事者として怒りに震えるとともに、私たちの当たり前の権利が脅かされるのではないかという恐怖を感じます。
 また、旧優生保護法下において強制不妊手術を受けさせられた被害者による訴訟が全国各地で行われている中で、いまだに「不妊処置」が行われていた事実に落胆し、憤りを覚えます。

今回の事案に対して、本会として障害当事者の立場から、以下4点について問題提起いたします。
1.誰もが子どもをもつ/もたない権利があり、それを選択する権利があること
 私たちには「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)」があります。国際的には基本的人権のひとつと考えられていますが、日本ではまだ浸透していない権利かもしれません。日本国憲法で説明すると、11条「基本的人権」、13条「幸福追求権」、14条「平等権」、25条「生存権」にも示されていることです。障害者にとっては、「障害があるから」「障害者だから」という理由で、障害のない人と比べるとより蔑ろにされやすい権利です。そのため、障害者権利条約23条「家庭及び家族の尊重」には性と生殖の権利について、以下のように詳しく述べられています。
 (a)婚姻をすることができる年齢の全ての障害者が、両当事者の自由かつ完全な合意に基づいて婚姻をし、かつ、家族を形成する権利を認められること。
 (b)障害者が子の数及び出産の間隔を自由にかつ責任をもって決定する権利を認められ、また、障害者が生殖及び家族計画について年齢に適した情報及び教育を享受する権利を認められること。さらに、障害者がこれらの権利を行使することを可能とするために必要な手段を提供されること。
 (c)障害者(児童を含む。)が、他の者との平等を基礎として生殖能力を保持すること。
誰もがパートナーをもつ/もたない、子どもをもつ/もたない権利があり、それを選択する権利があることを改めて伝えたいです。

2.包括的性教育を含む十分な情報提供と意思決定支援が必要であること
 日本は、政治介入があるほど性教育をタブー視し、学校教育の場で積極的に行ってこなかった歴史があります。障害特性からゆっくりと丁寧に学ぶ必要があるにも関わらず、十分な性教育が行われてきませんでした。上記1で述べた「権利がある」ということも教えられなかった人も多いでしょう。「不妊処置」がどういった意味を指すのか学ぶ機会はあったのでしょうか。自分の当たり前の権利を自覚しながら「子どもをもつ/もたない」ことを選択できるのでしょうか。
 権利の主体となるために、包括的性教育を含む十分な情報提供と、一人では意思決定が難しい方へは支援者のサポートが必要です。「説明し、合意を得た」と言い切ってしまうことには危険をはらんでいることを認識すべきでしょう。一人の人生を潰してしまうような取り返しのつかないことになってからでは遅いのです。

3.誰もが必要なサポートを得られる社会であること
 子育ては、親のみで完結するべきことなのでしょうか。子育てだけでなく、人は様々な場面で様々なサポートを得ながら生活をしています。実際に、様々な制度、社会資源を活用しながら、子どもを産み、育てている障害者カップルも全国各地にいます。それを支える支援者もたくさんいます。そういった実例を参考にするとともに、国の責務として足りていない仕組みに関しては補完していく必要があるでしょう。
 障害の有無にかかわらず、誰もが必要なサポートが得られる社会は、誰もが自分らしく生きられる社会です。

4.誰もが優生思想を持っていることを自覚し、内なる優生思想と闘い続けること
 「性について理解できないだろう」「責任をもって子どもを育てられないのではないか」「障害が遺伝したら子どもがかわいそう」などの声が世間では溢れています。中には「自分は優生思想はないけれど」と前置きしながら、上記の発言をする人もいるでしょう。しかし私たち一人ひとりに内なる優生思想があるのだと自覚しなければなりません。優生思想は、障害者の権利を侵害する行為につながるのです。「障害者はいないほうがいい」「生産性がない」という優生思想は、障害者にかかわらずすべての人の生き方を一定の物差しで測り、その行動に価値があるか/ないかで判断してしまうような社会につながりかねないのです。
多様な人たちがともに生きている社会は、社会の土台を強くします。差別とは何か、障害とは何か、私たち一人ひとりが向き合い、内なる優生思想と闘い続けることが必要です。社会の一員である私たち一人ひとりが、他人事ではなく自分事として受け止め考え続けることが求められます。

 当会は障害当事者団体として、優生思想に抗うすべての声を大切にし、誰もが等しく人権を尊重される社会に向けて声を上げ、連帯していきます。
(以上)

北海道江差町の社会福祉法人あすなろ会における「不妊処置」問題から見る、障害者の性と生殖に関する健康と権利についての声明

(やさしい)北海道江差町の社会福祉法人あすなろ会における「不妊処置」問題から見る、障害者の性と生殖に関する健康と権利についての声明

障害者関連法案の審議について

2022年10月12日

厚生労働大臣 加藤勝信様

障害者関連法案の審議について

全国自立生活センター協議会
代表 平下耕三

 

私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、障害者権利条約の完全実施に向けて障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会(インクルーシブな社会)を目指して活動する障害当事者団体です。全国110ヶ所を超える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。

私たちは、JILのビジョン(目指すもの)として「私たちは、障害者権利条約の完全実施に向けて障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会を目指します。」を掲げ、条約に則した障害者関連法の見直しを働きかけ取り組んでいます。8月23日、24日にジュネーブで行われた障害者権利委員と日本政府による建設的対話に日本から約100名、そのうち自立生活センターからは8団体、30名の障害当事者、関係者が駆け付け、傍聴やロビー活動で実情を伝え、対話を見守りました。その結果を受け、9月9日には、総括所見や脱施設ガイドライン、一般的意見第8号などが公表されています。

この総括所見には、1条から4条までの目的や理念、脱施設、インクルーシブ教育などで様々な課題について重要な指摘をされています。今後は、この総括所見に沿った法改正が必要だと考えます。しかしながら今秋の臨時国会において、4つの障害者関連法の改正法案が4法案一括で審議されると聞いています。

私たちは、総括所見で示された内容を踏まえて、吟味し、各法律で取り組めるよう丁寧に審議を深めてもらいたいと考えています。今回のような一括審議のような形ではなく、それぞれの法律において十分な審議時間が確保できるよう、特段の配慮をお願いします。とりわけ精神保健福祉法の改正については、より一層丁寧な議論をお願いします。また、障害者総合支援法において、総括初見・パラグラフ42[1]の(d)を踏まえ、当会を含め、多様な障害者団体の参画のもと地域移行に向けた検討会を早急に立ち上げることを併せて求めます。

[1] ■障害者権利委員会による総括所見(パラグラフ42(d)のみ抜粋)
42.自立した生活と地域社会への包摂に関する一般的意見第5号(2017年)および脱施設化ガイドライン(2022年)を参照し、委員会は締約国に要請する。
(d)障害者団体と協議の上、障害者の自律と完全な社会的包摂の権利の承認を含め、障害者が施設から他の人と平等に地域社会で自立した生活に効果的に移行することを目指す、期限付きのベンチマーク、人材、技術、資金を伴う法的枠組みおよび国家戦略、ならびにその実施を確保するための都道府県の義務付けを開始すること。

 

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旧優生保護法訴訟に係る
東京高裁判決及び大阪高裁判決上告取り下げについて

2022年3月15日

旧優生保護法訴訟に係る
東京高裁判決及び大阪高裁判決上告取り下げについて

全国自立生活センター協議会
代表 平下 耕三

 私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、障害者権利条約の完全実施に向けて障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会(インクルーシブな社会)を目指して活動する障害当事者団体です。全国110ヶ所を超える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。
国へ、旧優生保護法訴訟の3月11日東京高裁判決に対し上告しないことを強く求め、さらに、3月7日付で大阪高裁判決に対し上告したことへ強く抗議し、上告取り消しを求めます。
2022年2月22日の大阪高裁判決、3月11日の東京高裁判決では、ともに「旧優生保護法は非人道的で憲法に違反する」とし、この法律を作った国に責任があることを認めました。
賠償請求権が消滅する除斤期間に関しては、国が障害者に対して差別や偏見を助長し、被害者らを社会から切り離した国の責任を指摘、「訴訟を起こすための情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境にあった」とし、両判決とも「そのまま適用することは正義、公正の理念に反する」と判断されました。東京高裁判決では、人権を侵害する不妊手術を積極的に実施させていた国には賠償責任があるとして、「原告が国の施策による被害だと認識するよりも前に、賠償を求める権利が失われるのは極めて酷だ」と指摘し、「国が謝罪の意を表明し、一時金の支給を定めた法律が施行された平成31年4月から5年が経過するまでは、賠償を請求できる」と示しました。
また、岸田文雄首相・松野博一官房長官は、大阪高裁判決を受けて「政府として真摯に反省し、心から深くお詫び申し上げる」と言明しました。
国として間違ったことをしていたと反省し、被害者に対して申し訳ないと思っているならば、なぜ国は上告するのでしょうか。一連の旧優生保護法訴訟では、原告の方たちは高齢となっており、全国25名の原告のうち、すでに4名の方が亡くなられています。
これ以上、人権回復、損害補償を遅らせることはできません。控訴人らすべての優生保護法被害者に謝罪と賠償をすること、そして、未だ声を上げることのできない被害者への更なる調査と、二度と同じ過ちを繰り返さないための検証、一時金支給法の抜本改正を行い、優生思想のない社会にするための施策を講じることを強く求めます。

 私たち全国自立生活センター協議会は、全国の仲間たちに国の上告に対して各地から抗議の声を上げることを呼びかけます。障害のある人が一人の人間として尊重され、命の重さや尊さ、不要な命などなく、人間の存在そのものに価値があることを訴え続け、二度と同じ過ちを繰り返させないことを強く求めていきます。

(通常)旧優生保護法訴訟に係る
東京高裁判決及び大阪高裁判決上告取り下げについて

(やさしい)旧優生保護法訴訟に係る
東京高裁判決及び大阪高裁判決上告取り下げについて

【要請文】旧優生保護法
東京高裁判決上告しないでください!
大阪高裁判決上告取り消してください!

 

旧優生保護法の大阪高裁の判決に対する声明

2022年3月2日

旧優生保護法の大阪高裁の判決に対する声明

全国自立生活センター協議会
代表 平下 耕三

私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、障害者権利条約の完全実施に向けて障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会(インクルーシブな社会)を目指して活動する障害当事者団体です。全国110ヶ所を超える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。

2022年2月22日、旧優生保護法のもとで不妊手術を強いられたことは憲法違反だとして、聴覚障害のある夫婦らが国に賠償を求めた裁判で、大阪高等裁判所(太田晃註裁判長)は大阪地裁の判決を覆し、国に賠償を命じる判決を言い渡しました。

2018 年 1 月、宮城県の女性 2 人が 10 代のとき、強制的に不妊手術をされたとして、国 を相手にとって裁判を起こしたことをきっかけに全国各地で起こした裁判で初の勝訴判決となりました。判決では、1審判決で認められなかった賠償請求権が消滅する除斤期間に関し、「そのまま適用することは正義、公正の理念に反する」と判断しました。まさに除斤期間を適用しなかったことを強く支持します。

一連の旧優生保護法訴訟では、原告はいずれも高齢となっており、全国25名の原告のうち、すでに4名の方が亡くなられています。今回の控訴人の80代の夫は、「高齢なので国が上告すれば、判決まで待てるか不安なので上告しないでほしい」と求めています。

国に対しては、上告せずに速やかに本判決を確定させること、控訴人らすべての優生保護法被害者に謝罪と賠償することを強く求めます。そして、未だ声を上げることのできない被害者への更なる調査と、二度と同じ過ちを繰り返さないための検証、一時金支給法の抜本改正を行い、優生思想のない社会にするための施策を講じることを強く求めます。

私たち全国自立生活センター協議会は、全国の仲間たちに今回の全国で初めてとなる勝訴判決をこのまま確定させるべく国に上告しないよう声を上げることを呼びかけます。そして、すべての被害者の方々が救われるよう、全国各地の裁判での勝訴を目指し、傍聴をはじめとする様々な支援を行います。

障害のある人が一人の人間として尊重され、命の重さや尊さ、不要な命などなく、人間の存在そのものに価値があることを訴え続け、二度と同じ過ちを繰り返させないことを強く求めていきます。

旧優生保護法の大阪高裁の判決に対する声明

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コスタリカコーヒー販売事業が引き継がれました。

当会の加盟団体であるメインストリーム協会が、コスタリカの自立生活センター支援のためにコスタリカコーヒーの販売をしておりましたが、販売事業がNatuRica合同会社(下記URL参照)へ引き継がれました。
コーヒー販売の収益はコスタリカの自立生活センターMORPHO(モルフォ)の活動資金として使われます。これを機会にぜひみなさんの事務所やご家庭、カフェにコスタリカコーヒーの導入をご検討ください!JIL事務所でもいつも頂いています。毎日飲むのにぴったりな、すっきりとした味わいでとっても美味しいです!

NatuRica合同会社:https://www.naturica-cr.com/

コスタリカの自立生活センターの活動はこちらでチェック!

 

 

障害者無差別殺傷事件から
5年を迎えるに当たっての声明

2021年7月26日

障害者無差別殺傷事件から5年を迎えるに当たっての声明

全国自立生活センター協議会
代表 平下 耕三

 私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、地域の中で共にある社会の実現を目指して活動する障害当事者団体です。全国各地に110ヶ所を越える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。
 2016年7月26日未明、神奈川県相模原市にある障害者支援施設「津久井やまゆり園」に元職員で死刑判決を受けた植松聖被告が侵入し、鋭利な刃物で入所者19名を殺害した事件から5年が経過しました。しかし昨年、全16 回に及ぶ公判において被害者個人の名前は「甲」「乙」などと匿名で扱われ、その生きてきた証も表明されておらず、事件が起こったその背景や、そもそも入所施設の在り方などの点において、審議が明らかに不十分で何も解明されていません。判決文の中に植松聖被告の反省のなさやヘイトスピーチには踏み込んでおらず、社会の中にある優生思想とこの事件の関係について問題意識が感じられない判決文だったと言わざるを得ません。Ablism(能力主義)と優生思想の関連に触れることなく、社会に蔓延する優生思想の危険性について全く触れられなかったことは、この事件の波及性を社会に訴える機会を逸した多くの課題を残す裁判となりました。
 昨年からの新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大は未だに収まらず、多くの人々の命や健康が脅かされ続けています。
健康や経済が阻害されると誰もがあっという間に弱い立場に追いやられ、そして、すでに弱い立場にある人がさらに置き去りにされるという、日本社会の脆弱さをこのパンデミック(世界的大流行)は浮き彫りにしました。
 このような社会の脆弱さは、障害のある人たちを入所施設に収容してきた社会の在り方と繋がっていると考えます。
事件当時、障害のある人たちに対するヘイトスピーチが浴びせられました。今回のコロナ禍においても優勢思想にもとづいた障害のある人への治療が拒否されたり、後回しにされてしまうという差別が国内のみならず、世界中で起きていることを私たちは知っています。誰もが命と生活を軽んじられる状況があると考えます。奪われてよい命、軽く扱われてよい命などありません。
 私たちは、改めて事件の風化を阻止し、障害のある人が一人の人間として尊重され、名前が匿名で扱われることがないような社会の実現に向け、命の重さや尊さ、不要な命などなく、人間の存在そのものに価値があることを訴え続け、二度と同じ過ちを繰り返させないことを強く訴え続けていきます。

障害者無差別殺傷事件から5年を迎えるに当たっての声明
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相模原障害者殺傷事件(津久井やまゆり園事件)から
5年。各地での追悼企画のご紹介

相模原障害者殺傷事件(津久井やまゆり園事件)から5年。
コロナ禍により大規模集会の開催はありませんが、
各地での追悼企画をご紹介します。

今年は相模原障害者殺傷事件から5年の年です。
毎年この時期に神奈川の団体が中心となって「ともに生きる社会を考える神奈川集会」を開催し、DPIとJILは共に呼びかけ団体として参加してきました。
昨年はコロナ禍で開催がなされず、声明を発表するという形になりました。
今年は、コロナ禍及びこれまで中心的に活動されていた神奈川の団体の諸事情もあり、残念ながら具体的なアクションができません。
しかし、他県での集会や、小規模であったり個人単位での開催も含めて各地でそれぞれの取り組みがなされます。7/17までにいただいた開催情報を、以下のようにご紹介させて頂きます。

自立生活センターSTEPえどがわ:今村登

<関東>
■7月25日(日)12:30~
場所:LOFT/PLUS ONE(新宿)&オンライン配信有り(有料)
『相模原障害者殺傷事件の真相に迫る』
https://peatix.com/event/1953097T~fbclid=IwAR2Vie95IYGNRf-398OdSD0aXQQ1uhM1aokQ-E5ZVNvxDhCUJkNv3eAFuqU

■7月25日(日)14:00~
オンライン(zoom)イベント
相模原殺傷事件を忘れないzoom合同アピール行動2021
共催:相模原殺傷事件を忘れない実行委員会えどがわ/津久井やまゆり園聖火リレーに反対し、自分達のありようも問い続ける仲間達の会
https://www.facebook.com/Poemhajimenoippo/posts/2837760632980581/

■7月26日(月)14:00~15:30
場所:津久井やまゆり園(オンライン献花)
7.26 施設害者虐殺から5年・JIL脱施設プロジェクト「献花及びオンライン献花
呼びかけ:JIL脱施設プロジェクト
連絡先:jcsa.kikusui@gmail.com
現地(津久井やまゆり園とZoom繋ぎオンラインで献花)
https://us06web.zoom.us/j/89710205103~pwd=NEgvVkpuN1h3ZlNoMkFKcS9sZS9Udz09
ミーティングID: 897 1020 5103パスコード: 575682

■8月1日(日)13:30~
場所:ソレイユさがみ
『津久井やまゆり園事件から5年~マイノリティの人権について考える』
主催:津久井やまゆり園事件を考え続ける会
https://www.facebook.com/events/1409843546043453

<関西>
■7月25日(日)15:00~
オンライン追悼アクション(facebookイベントとZoomでライブストリーミング)
『障害者を殺すな 7.25 オンラインアクション ――やまゆり園事件を忘れない』
主催:リメンバー7.26神戸アクション
https://www.facebook.com/events/958845818242668~ref=newsfeed

■7月26日(月)18:30~
場所:大阪梅田ヨドバシカメラ周辺
『7.26施設障碍者虐殺5年目の追悼アクション』
主催:726追悼アクション有志
https://www.facebook.com/events/160686652695988/~acontext=%7B%22event_action_history%22%3A%5B%7B%22mechanism%22%3A%22your_upcoming_events_unit%22%2C%22surface%22%3A%22bookmark%22%7D%5D%2C%22ref_notif_type%22%3Anull%7D

■7月26日(月)14:00~
場所:長居公園
『相模原事件を風化させないアピール活動』
主催:大阪のあいえる協会(自立生活センターまいど)

■8月1日(日)13:30~
オンライン(zoom)イベント
定員:30人程度(先着順)
『津久井やまゆり園事件を忘れないZOOM集会inみえ』
主催:津久井やまゆり園事件を忘れない集会inみえ実行委員会
https://sites.google.com/view/yamayuri0801~fbclid=IwAR1-OoYK6SCMYNzoYGP2ENE4K5ensqGYZ03062GiIZ6c4fhyE7zoB5oxH8Q

小山田圭吾氏の「障害者いじめ」問題から見る、
日本におけるインクルーシブ教育の課題に対する声明

2021年7月21日

小山田圭吾氏の「障害者いじめ」問題から見る、
日本におけるインクルーシブ教育の課題に対する声明

全国自立生活センター協議会
代表 平下 耕三

 私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害者権利条約の完全実施に向けて障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会(インクルーシブな社会)を目指して活動する障害当事者団体です。全国110か所を超える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。
インクルーシブな社会を実現するために、教育分野からでは、障害者権利条約第24条「教育」および一般的意見4号(インクルーシブ教育を受ける権利に関する一般的意見)に書かれているインクルーシブ教育の実現を目指し全国で活動しています。

東京2020オリンピック・パラリンピック大会における楽曲制作へ参加する予定だったミュージシャンの小山田圭吾氏による「障害者いじめ」発言や一連の報道について、全国自立生活センター協議会(以下「本会」という。)として次のとおり、声明を発表いたします。
小山田氏は私立の小中高一貫校に在学していた際、障害のあるクラスメイトおよび近隣の特別支援学校(養護学校)に通っていた障害のある人たちに対して、「いじめ」という言葉では済まされないような残虐な行為や心ない発言をしており、そのことを複数の音楽雑誌のインタビューにて自慢するかのように語っていた、と報道されています。一連の報道や世間からの批判を受け、7月19日付で楽曲制作担当を辞任すると申し出ており謝罪もしています。

今回の事案について、本会としてはインクルーシブ教育の視点から、以下の3点について問題提起いたします。

1.多様な子どもがいることを学べる機会となるはずのインクルーシブ教育が、ダンピングとなってしまっている社会的環境要因を見直すべき
小山田氏のインタビュー記事より、自身が在籍していた学校は、障害のある子どもと障害のない子どもが共に学ぶ方針をもっている学校であったことが伺えます。
日本は、2014年に障害者権利条約を批准し、障害児者に関する様々な法制度が整備され、インクルーシブ教育の実現を目指しています。「インクルーシブ教育」「共生教育」を教育方針として掲げる学校も増えてきました。しかし、合理的配慮(「障害の社会モデル」の視点から一人ひとりの困難さに向き合い、その人に必要なサポートを保障すること)が提供されずに、ただ「同じ場所で共に過ごす」ことに重きを置かれ、何もサポートがないままに教室で過ごしているという状況の学校は、過去には「投げ捨て」(ダンピング)という言葉で批判されています。小山田氏が通っていた学校でダンピングが行なわれていたかどうかはわかりませんが、そのような状況の学校は今でも多く見られます。
学校のバリアフリー化が進んでいない、教員の多忙化、障害の社会モデルの考え方が浸透していないなど様々な要因が考えられます。担任だけで問題を抱え込むのではなく、社会全体としてインクルーシブ教育の実現に向けた取り組みを行なうことが求められます。障害のある子どもを含む多様な子どもたちが、ただ一緒に過ごすだけでなく、一人ひとりに応じた必要なサポートを受けながら、クラスの一員として様々な学びや経験を保障されるインクルーシブ教育の重要性を改めて表します。

2.分けてきたからこそ起こりやすくなる同様の事件が、さらに「分離」に加担することのないように、事件の根源を見直すべき
インクルーシブ教育は、障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会をつくっていくことにつながると考えられています。「障害」という言葉を知らない小さい子どものうちから、多様な人たちと出会い共に過ごすことで、様々なことを子どもたちは学び取り人権感覚が養われていきます。
今回の件が発端となり、「障害のある子どもがいじめの対象になってしまうかもしれないから分けたほうがいい」というように、社会全体で障害のある子どもと障害のない子どもを分けて教育をする「分離教育」に逆行してしまうのではないかと私たちは危惧しています。障害があるかないかで分けてきた教育が、「障害者はいないほうがいい」「生産性がない」という優生思想を生み、排除を加速させてしまうのではないかと考えます。インクルーシブな社会はインクルーシブな教育からつくられるのです。

3.私たち一人ひとりが差別に向き合い、なぜ差別が起こってしまうのか考え続けることが必要
上記にも書きましたが、「いじめの原因は障害があるからだ」という考え方は問題の本質から目を逸らしていることに過ぎません。
今回は小山田氏の過去のインタビュー記事から、障害のある人への差別について大きなバッシングが起きましたが、小山田氏のように障害のある人への差別や偏見を抱く人は未だに少なくないでしょう。小山田氏個人を非難するのではなく、障害のある人への差別が起きてしまう社会の構造を変えていくことを、私たちは求めています。なぜいじめが起きるのか、差別とは何か、障害とは何か、私たち一人ひとりが向き合い、内なる優生思想と闘い続けることが必要です。社会の一員である私たち一人ひとりが、他人事ではなく自分事として受け止め考え続けることが求められます。

(以上)

小山田圭吾氏の「障害者いじめ」問題から見る、
日本におけるインクルーシブ教育の課題に対する声明

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